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「美しい昔」カーン・リー Diem Xua

二十年以上前のある日、FMを聞いていたら心がジーンと
しびれるような歌声が流れてきました。
 
途中からアジアの言葉で歌われていて、そのやわらかい響きも
印象に残りました。

「美しい昔」というタイトルだと紹介されたので、さっそく
レコード屋で探して買い求めました。 
B面の「ユエの子守唄」もなかなかいい曲でしたね。

「美しい昔」は1978年のNHKドラマ・人間模様「サイゴンから来た
妻と娘」の主題歌ということでしたが、ちょうど日本に
いなかった時期でしたので、知りませんでした。

ただし近藤紘一さんの「サイゴンから来た妻と娘」は、雑誌で
読んでいたので、ストーリーは知っていました。
この物語に「美しい昔」はピッタリですね。



「美しい昔(雨に消えたあなた)」は、「Diem Xua」という原題の
ベトナムの反戦歌です。

作者のTRINH CONG SON (チン・コン・ソン)(1939年生まれ)は
ユエ出身の60年代に活躍したシンガー・ソングライターで、
同郷の女性歌手Khanh Ly(カーン・リー)(1945年生まれ)と
組んで、数々の反戦歌の名曲を生みだしました。

「ベトナムの太陽」と呼ばれたカーン・リーの歌声は、政府権力が
歌舞音曲を禁止しても、人々の間に静かにひろがっていき、希望を
与え続けました。

1970年、ユエからサイゴンに落ちのびていたカーン・リーは、
大阪万博に出演し、日本語盤の「美しい昔」をリリースしました。

1972年、チン・コン・ソンは、当時の南ベトナム政権から曲の
出版を禁止されてしまいます。

1975年にサイゴンが民族解放戦線の手に落ちると南北ベトナムは
統一されますが、共産主義の支配する社会を嫌って国外に脱出する
人々が続出します。

そんな中でも二人は国内に残ることを選びます。

カーンさんは旧南ベトナム政府の下級官吏と結婚し、2児を
もうけていました。

ある日、共産軍の兵士がやってきて「反革命の疑いがある」との
理由で、目の前で夫が射殺されてしまいます。

悲しみにくれるカーンさんに、チン・コン・ソンは「私は
明日、共産軍にダナンに連行されるところですが、一人身なので、
逃げずにこの国の将来を見届けるつもりです。
でも、あなたは子どものためにすぐに逃げるべきです。」と
言います。

その夜、カーン・リーは生後5ヶ月の乳飲み子を抱いて
ニャチャンの海辺から小さなボートでベトナムを脱出します。

当時はボート・ピープルとして国外に逃れる人々も続出しました。


1981年、アメリカの難民キャンプを慰問しながらチャリティ・
コンサートを続けていたカーン・リーの消息がつかめて、
ファースト・アルバム「美しい昔」がリリースされました。
ジャケットの涙を流す少年(市川朝雄さんのイラスト)が
印象的です。

カーン・リーのこの半生は、のちにドキュメンタリーとして
放映されましたので、ご覧になった方もいらっしゃるでしょう。


チン・コン・ソンはその後復活しますが、2001年4月1日、
ホーチミン市で死去しました。 享年62歳でした。


「美しい昔」の現地語盤は3拍子ですが、日本語盤は4拍子で、
より「語り」の要素が強い感じです。





「美しい昔」は菅原やすのり(1984年)、加藤登紀子(1997年)、
天童よしみ(2003年)がカバーしています。




「美しい昔」のベトナム語の歌詞と翻訳はこちらです。 
日本語盤レコードの高階真の歌詞とは別のものです。

homepage3.nifty.com/daovaquat/Diem Xua.pdf
この記事へのコメント
デルタソフトの河井と言います。昨年からベトナム青年の志に感銘して、共同で日本とベトナムに会社を作り、ベトナムの学生に日本語を教え、私の会社の他、友達の会社へ正社員として採用してもらう活動をしています。
ベトナムの私の会社で日本語を勉強している学生から、美しい昔のCDをもらいました。大変良い曲なので、Khanh Lyさんとチンコンソンさんを調べていたら、このURLの紹介が大変解りやすく良かったです。完
Posted by 河井 完治 at 2008年06月22日 18:16
河井さん、コメントありがとうございます。

歌手の杉良太郎さんや俳優の滝田栄さんが長い間ベトナムへのチャリティを
続けているそうですが、それほど日本人を惹きつけるものがベトナムには
あるのですね。

日本とベトナムの架け橋をたくさんつくってください。
Posted by dolce at 2008年06月22日 19:52
来月、ベトナムでこの歌を歌うことになり、調べていたら、ここに辿りつきました。カーン・リーさん、チン・コン・ソンさんのこと等とても参考になりました。ありがとうございます。
Posted by 萩原かおり at 2008年08月26日 20:29
萩原 さま

本当に音楽、特に良い歌は民族を超えて人を
感動させますね。

日本語の歌詞もいいのですが、ベトナム語の
音も気に入っています。

きっとベトナムの人たちも一緒に口ずさんで
くれることでしょう、楽しみですね。
Posted by dolce at 2008年08月26日 21:11
ご報告がとても遅くなってしまいましたが・・・昨年の9月、ベトナムで「美しい昔」を歌ってまいりました。イントロが流れ、日本語で歌い出したときはもちろんのこと、繰り返しのさびの部分を拙いベトナム語で歌い始めましたら、割れんばかりの拍手を頂くことが出来ました。本当に喜んでいただけたようです。
このサイトから、この歌に関する様々なことを調べることが出来たおかげです。ありがとうございました!!!
その後、11月には日本青年館での演奏会で、ベトナム演奏旅行の報告も兼ねて一弦琴と共に歌いましたし、来月行う予定のライブ・コンサートでも歌う予定です。この素敵な曲は私の財産としての1曲にもなりそうです(^o^)
Posted by 萩原かおり at 2009年01月25日 15:38
萩原 さま

お役に立ててうれしいです。
歌でココロが通じ合うって素敵ですね。
わたしもそんな曲を作りたいです♪
Posted by dolce at 2009年01月25日 21:25
曲を作られるのですか?
どんなタイプの曲なのでしょう?
このブログからはいろんな音楽に精通なさっているようにお見受けしましたが(^o^)
一度拝聴してみたいなぁ(*^_^*)
Posted by 萩原かおり at 2009年01月26日 13:11
私の街に住んでいる外国籍の人に、ボランティアで日本語を教えています。
半年前からベトナム人の若い女の子がたくさん教室に来るようになり、先日開いたパーティでは「美しい昔」を一緒に歌いました。若い子は知らないだろうと思いながら歌詞を渡すと、ナントみんなが知っていたのです!!!
私はリアルタイムでNHKドラマも見ており、この曲の虜になりベトナム語を耳から覚えたものでした。それが何十年も経った今、ベトナムのみんなと歌えた事と、このサイトでカーン・リーの元気な姿を見られた事は、とても嬉しく大感動です。ありがとうございました。
Posted by kyoko at 2011年12月17日 00:00
kyokoさん
喜んでいただけてうれしいです。
ベトナムでは誰でも知っているスタンダードなのかもしれないですね。
これからも国際交流にご活躍されることをお祈り申し上げます。
Posted by dolce at 2011年12月17日 17:12
私もNHKのドラマを観ていました。その後大人になり、近藤紘一さんの本を古本屋で見つけるたび買い求め何冊も読みました。娘も愛読しています。
「パリへ行った妻と娘」の跡近藤さん一家はどうなさっていたの気になっていましたが、ネットの発達のおかげで45歳の若さでお亡くなりになっていたことを知りました。
そして今日あの主題歌だった「美しい音」にまた巡り合えました。初めて聴くベトナムの曲でしたがその美しさがとても印象的でした。主演されていたベトナム人の(一般の方だったと記憶していますが)その方の美しさも印象的でした。
Posted by ピッカルくん at 2013年08月03日 15:05
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